「学校に行きたくない」毎朝泣いて嫌がっていた美鈴ちゃん(当時小学3年生)に出会ったのは、2011年秋のことでした。
ミネラル補給と、お母さんと一緒にお風呂に入り、スキンシップをしっかりとることを始めて半年後・・・
生まれ変わったように元気に登校できるようになりました。
●不安だらけの育児
小学1年生のとき「間違いなくアスペルガー症候群です」と診断を受けた美鈴ちゃん。
美鈴ちゃんは、赤ちゃんの頃からよく泣き、お母さん以外にはなつかず、一日中おんぶか抱っこをしていなければなりませんでした。
離乳食が始まると、食が細く、スプーン1さじを食べさせるのにも苦労しました。
言葉は1歳半から出始めたものの語彙は少なく、 幼児クラブで同年代の子と遊んでいても思いが通らないと噛みついてしまうなど、不安だらけの育児のスタートでした。
●「学校に行きたくない」
神経が過敏で嫌なことを何度も思い出し、同じような気分を繰り返すフラッシュバックもあった美鈴ちゃん。
小学校へ入学した直後に、先生から些細さいなことで叱られ、それをきっかけに、翌日から学校へ行けなくなり、 お母さんに付き添われてやっと登校するようになりました。
2年生で担任の先生が替わると、少し落ち着いたものの、3年生では、また登校を嫌がるようになりました。 毎朝泣き叫ぶ美鈴ちゃんをお母さんが無理やり学校へ連れて行って、そのまま教室に残り、一日中付き添う毎日が続いたのです。
小児科医の先生に、「低血圧、起立性調整障害の傾向がある」と言われ、お母さんの心配は募る一方でした。 「泣いているところをクラスの子たちに見られているという自覚が出てきて、余計に教室に入れなくなったみたい」 お母さんは美鈴ちゃんの心情を察し、登校して、別室から教室へ行かせるなどの工夫も重ねました。
●授業についていけない
登校を嫌がることに加え、黒板の文字をノートに書き写すのが遅く、授業についていけなくなったことも、大きな心配事でした。 つらい朝が続く中、美鈴ちゃん親子を心配していた近所の方から『食べなきゃ、危険!』を勧められ、ご縁がありミネラル補給が始まりました。
●ミネラル補給1週目ーお母さんの腰痛がまず改善
美鈴ちゃんは、少しの味つけの違いにも敏感なので、最初は煮干し、飛魚、昆布から煮出した液体の天然だしを、 オムレツや納豆、ラーメンにかけたり、マヨネーズに混ぜて使い始めました。
実は、美鈴ちゃんのお父さんもひどい偏食で、結婚後は、煮干しと胡麻を封印していたのですが、この機会に煮干しと昆布でだしをとり始めます。 すると真っ先に体の変化を感じたのはお母さんでした。
5年前に発症した椎間板ヘルニアの痛みが軽くなってきたのです。
「夜、腰の痛みで横になっていることができず、朝食を作り、洗濯物を干すと、腰が悲鳴をあげ、足をひきずりながら歩くほどでした。
ところが、天然だしを使いはじめて2~3日で腰痛が軽くなり、朝までぐっすり眠ることができるようになったのです」
●ミネラル補給2週目ー外に出たがるように
9日目、自分自身の体の変化を実感したお母さんから、「このところ、美鈴が外に出たがるのです」
今までは休日にパパが誘っても、ママと一緒に家にいる!と出たがらなかったのに、今はすぐに、みーちゃんも一緒にいく!と言って出て行きます。 すごく気持ちが明るくなってとてもよい傾向です」と、 うれいしい報告が届きます。
そして、この時期は「野菜も嫌がらずに食べています。いつもイライラしていたのだけど、最近穏やかになってきました」という変化もみられました。
●ミネラル補給3週目ー意欲が出てきた
3週目からは、あごの微粉末も加えてみることに。 微粉末なので食感が変わらず、美鈴ちゃんも抵抗なく、パスタやピラフに入れて順調に使い始めます。
すると、「最近、美鈴に意欲的な姿勢がみられ、ワークブックをこれまでにない早いぺースで、1日でやり遂げました。自信をつけたみたいで、 “今日もやる”と言うのでびっくりしています」と報告が届きました。
また、黒板の文字を書き写すことが遅いと心配していたのですが、「今は速くなってきて、遅れをとらずに書けるようになった」というのです。
さらに
「大嫌いだった国語の授業に参加できた上、黒板の字を写すときもどんどん書くことができ、用紙が足りなくなると追加の紙をもらいに行き、 先生もびっくりしていました。今までになく調子がよいです」
「授業に集中できるようになり、勉強も理解できている様子です」と、 心配していた学習面にも良い兆しがみられ始めました。
美鈴ちゃんは、ずっと食が細かったのですが、この時期は、朝からご飯や餅をモリモリ食べられるようになっていたのです。
●ミネラル補給ー1ヶ月目ーお風呂療法でさらに安定
そして、ミネラル補給開始25日目には、「少し学校が楽しくなってきた」と美鈴ちゃんのうれしい一言。 心身の安定がみられ、少しずつお母さんの心配も解消されてきましたが、 1人で学校へ行けるようになってほしいという切実な思いにまでは、もう一息というところでした。 お母さんと離れる不安がまだ少し残っていたので、
※昌子 武司先生の提唱する「お風呂療法」(お風呂に親子で入り、お母さんの手で子どもの体を洗うことで感覚を分散させ、安定感を得る療法)を勧めました。
すると美鈴ちゃんの気持ちが安定し、さらにうれしい変化が続いたのです。
「一緒にお風呂へ入り、美鈴と弟の2人の体を洗って湯舟で遊んでいます。 最初は、どうして毎日洗ってくれるの?と戸惑っていましたが、2人ともとてもうれしそう。
弟にも劇的な変化がありました。美鈴につきっきりの私に、いつも反抗的な態度をとっていたのですが、 お風呂に一緒に入るようになると、表情もとても穏やかで、すねても回復するのが早くなりました。 美鈴も、今までは私が弟をかまっていると、必ず横に来て弟から完全に私をとるまで騒ぎ立てていたのが、今は、弟をかまっていても気にせずシラッとしています。
2人とも心が満たされている感じがします」
※昌司 武司先生
1925年島根県生まれ。早稲田大学心理学科、大学院修士課程卒業
アイオワ州立大学付属小児精神医学センター、東京都立教育研究所相談 部、国立特殊教育総合研究所、大妻女子大学児童科教授兼児童臨床センター教授を経て、現在エルベ臨床心理研究センター所長
家庭教育に関するテレビ、ラジオのレギュラーとして長年出演
著書「自閉児と情緒」「自閉症の言語獲得」「情緒障害」「親子関係と情緒」「学習意欲」「育児は育自ーマザーゼミの実践よりー」など多数
●「こんなに書けちゃった」
お風呂療法を始めて1ヵ月後、意欲や集中力もさらにアップして、苦手だった国語で物語を作る課題で、 絵と文字で5ページもの大作を仕上げたのです(写真)。
自分でも「こんなに書けちゃった?」とびっくりした美鈴ちゃん。
書道の時間も、今まではまったく書こうとせず、みんなの作品が壁に飾られても、美鈴ちゃんのところは白い半紙のままでしたが、 みんなと一緒に書けるようになり、作品も堂々と飾られるようになりました。
「最近、また一段と学校が楽しくなってきたようで、休み時間が待ちきれない感じで外に飛び出していきます。
“学校行きたくない”というセリフはめったに出なくなり、少し前の、気分に振り回されていた頃が嘘のようです」
「もう1人で行けるようになるのでは」と期待を寄せながらも、 お母さんは「あせって追い込まないようにしよう」と自分に言い聞かせ、美鈴ちゃんを見守ります。
●終業式の日、ついに1人で登校
そして、3月の終業式。「今日は1人で学校へ行って来る」と待ちに待っていた1人で登校できる日がやってきました。
「4年生になったら、私1人で通学班で行くね」と頼もしい美鈴ちゃん。
そして新学期、「美鈴は生まれ変わったように元気に学校へ行っています」
6月には「学校生活にも慣れ、早く行かなくちゃ!と言って嵐のように出て行くようになりました」
「学校から帰ってくると、友だちとしっかり遊び、夜はちゃんと宿題をするという流れができています。昨年までの美鈴が信じられないくらいパワフルです」
お母さんと一緒に長いトンネルを抜けた美鈴ちゃん。初めて会ったときとは見違えるような快活な表情となりました。
●授業中に手を挙げて発言
本来の力を発揮できるようになった美鈴ちゃん。漢字をがんばって練習し、テストで98点と高得点を取りました。 これまではテストを受けることも嫌がっていたのに、すべてのテストを受けられるようになり、学習面の不安もなくなりました。
授業中に活発に手を挙げて発言するようになったと、先生からほめられます。
そして、夏休みには少年団のスポーツクラブに入部し、 毎日、くたくたになるまで練習に励み、ご飯をしっかりたべてぐっすり眠る生活を送っています。
「もちろん、もう私が付き添っていなくて大丈夫です。意欲がどんどん増して、まるで表情が違うのです。 なんだか去年のことが嘘のようです」と、 お母さんも美鈴ちゃんのめざましい成長に目を見張っています。
●クラスの友だちに認められ自信に
そして4年生の7月、体育のプール検定でのこと。
運動が得意な美鈴ちゃんは、泳力はあったのですが、 今までは学校のプールを嫌がり、検定を受けられませんでした。 でも、この日はみんなと一緒に検定を受け、25mを泳ぎきって顔を上げるとクラスの友だちが応援してくれる姿が目に入り、 ターンしてもう1回25m泳ぎ、またみんなが応援してくれるので頑張って……ついに100mを泳ぎきり、
見事、1級に合格。 この日のうれしいニュースを真っ先に教えてくれたのはクラスの友だちでした。
「美鈴ちゃん、すごかったんだよ」「100mも泳いだんだよ」と、何人もの友だちが、 帰り道で出会ったお母さんに、自分のことのように嬉しそうに話してくれたのです。
お母さんは、3年生まで学校に付き添っていた時期を振り返り、「まわりの子どもたちは、私たち親子のこと心配してくれていたのですね。美鈴ががんばったこともうれしいのですが、それをクラスのお友だちがうれしそうに報告してくれたことがさらにうれしくなりました」
美鈴ちゃんにとっても、クラスのお友だちに、「すごいね」と認められた体験は、確かな自信となったようです。
その後、地域のミニバスケチームにも自分から入りたいと言いだし、厳しい練習にもめげずに参加し試合にも出るようになっていきました。私も試合の応援に行きましたが、たくましく、楽しそうにプレーする美鈴ちゃんの姿に、胸がいっぱいになりました。
小学校高学年になると、登校班の班長を務めたり、ミニバスケチームの遠征試合に、家族と離れて参加してきたりと、お母さんも目をみはる変化はさらに続きました。
●成長とともに量を増やして
ミネラル補給を始めてから、5年が経過。現在、美鈴ちゃんは中学2年生になり、運動部で汗を流しながら元気に毎日を過ごしています「子どもが毎日楽しそうに過ごしてくれるって、こんなに大きなことなのですね」と美鈴ちゃんの変化を喜ぶお母さん。
診断当初を振り返り「アスペルガー症候群の診断が出て、どうすればいいかと聞いても、その場しのぎの対処法を言われるだけでした。 いつも“治りませんからね”ばかり。的確なアドバイスも希望も与えずに診断名だけはつけられても、どうしたらよいものか悩むだけでした」と、常に 閉塞感を感じていた頃を振り返ります。
「食事とお風呂、身近にこんな方法があったのですね。もう学校に付き添っていた頃が思い出せないくらいです。心配していた学習面でも頑張っています。悩みを抱えるお母さんたちに、是非とも知ってほしいですね」と、
日常の中に改善のきっかけをつかんだお母さんは、その後も美鈴ちゃんの成長にともなって、ミネラル補給も増やすよう意識し、オリーブオイル、納豆、卵などからのレシチンの補充も追加しながら美鈴ちゃんの心の安定を支え続けています。
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